豚丹毒(とんたんどく)~世界中に発生を見る疾病

皆さんは「豚丹毒(とんたんどく)」という病気をご存知でしょうか?
豚丹毒は古くからある病気で、その名の通りブタやイノシシに罹患する病気なのですが、ヒトを含む様々な生物に感染する病気の1つです。
今回はそんな感染症の1つである「豚丹毒(とんたんどく)」についてお話したいと思います。

豚丹毒(とんたんどく)とは?


豚丹毒は豚丹毒菌というグラム陽性細菌によって引き起こされる病気です。
自然界でもブタやイノシシなどの陸棲哺乳類はもとより、イルカやクジラなどの水棲哺乳類、七面鳥などの鳥類など、世界中広範囲に豚丹毒は確認されています。さらに人的環境でも畜産所の家畜や水族館で飼育されているイルカなどへの罹患等多数で確認されています。
また豚丹毒はそれら獣鳥にふれることにより人にも感染する典型的な人獣共通感染症の一つであり、日本では家畜伝染病予防法における届出伝染病に指定されている病気でもあります。
特にブタは他とくらべ豚丹毒の発生数が多く養豚業に経済的損失を与えるため、大きな問題となっている病気です。
豚丹毒を引き起こす豚丹毒菌の病原因子としては、豚丹毒菌が産生するノイラミニダーゼが知られており、本酵素は宿主細胞への付着や侵入に深くかかわっていることが明らかになっているそうです。

豚丹毒(とんたんどく)の感染経路


豚丹毒菌の感染経路は主に飼料を介した経口感染が主であるといわれています。
経口感染の他、ケガなどの創傷感染や蚊などの吸血昆虫によるもの、また魚介類の体表粘液からも確認されており、動物間での水平感染も確認されているそうです。
養豚場においては、ブタの扁桃や消化気管に存在する菌が、さまざまなストレスをきっかけとして血管系に到達し、感染発病へと進展するものと思われています。その結果、感染したブタの糞尿から大量の菌が排泄され、他の健康な動物に感染拡大していくとのことです。

豚丹毒(とんたんどく)の症状


豚丹毒症はブタの場合、その症状から急性敗血症型、亜急性蕁麻疹型、慢性心内膜炎型、慢性関節炎型に分類されます。
特に急性敗血症型は悪寒や発熱、倦怠感など全身感染をおこしている状態で、抹消組織に十分な栄養と酸素が届かないことから肝臓や脾臓が腫大し、致死率が高いことで知られています。
亜急性蕁麻疹型は発熱や食欲不振などの症状に加えて、全身または局所皮膚に菱形疹と呼ばれる特徴的な皮膚炎をおこすことから、ブタが生きている時に行う「生体(せいたい)検査」の時にみつけることも可能です。
慢性心内膜炎型は外見上では異常はみられませんが、心臓弁膜に細菌塊(イボ)ができ、
慢性関節炎型は四肢の関節の腫大,腫脹、疼痛、硬直、跛行みられます。
と畜場などで発見されるのは関節炎型が多く、次いで心内膜炎型と蕁麻疹型であり,敗血症型が発見されることは稀とのことです。

ヒトにも感染~類丹毒(るいたんどく)とは?


豚丹毒菌がヒトに感染することにより発生する病気があります。類丹毒(るいたんどく)と呼ばれる病気がそれです。
類丹毒に罹患された患者さんの多くは獣鳥や魚介類と触れ合うことの多い「獣医師」や「漁業・畜産関係」の職業の方が多く、職業病として認識される病気とのことです。
類丹毒は傷口などから豚丹毒が侵入することにより感染し、皮膚炎を発症させる病気です。こちらも時として心内膜炎や関節炎を発症することがあり、最悪の場合は敗血症に陥り死亡することもあることから注意の必要な病気でもあります。

豚丹毒(とんたんどく)に罹患する動物たち


前述した通り、豚丹毒はブタやイノシシなどの陸棲哺乳類をはじめ、イルカやクジラなどの水棲哺乳類、鳥類と、世界中で発生が確認されている病気です。
ブタ以外の家畜では羊や子牛に豚丹毒による関節炎の発生が多く見られたそうです。その中でも鳥類は特に感染性が高く、ニワトリや七面鳥、ダチョウやアヒルなどで敗血症の報告があったそうです。
また水棲哺乳類では特にイルカの豚丹毒罹患報告があります。イルカが食べる餌が豚丹毒に罹患されていたのではないかとも噂されています。
また近年ではイヌにも発生が見つけられたとの報告もあり、実にさまざまな動物たちが豚丹毒に罹患しているようです。

豚丹毒(とんたんどく)の予防


最悪の場合は死にまで至ってしまう豚丹毒ですが、基本的な予防としては、生ワクチン及び不活化ワクチンが用いられているそうです。また治療には、ペニシリン系抗生物質が極めて有効であるということです。
また豚丹毒は熱や消毒薬に弱いということから、しっかりとした衛生管理がされている施設での飼育が豚丹毒予防の基本となります。それら施設では前述したワクチンの普及により発生数が減少傾向にあることから、定期的なワクチン接種を心がけ、発生を抑えているとの報告もあがっています。ただし、同じワクチンでも生ワクチン由来と疑われる関節炎の発症が頻発することがあるので、接種の際は適正に実施するよう注意が必要とのことです。

最後に


現在ではまだ豚丹毒(とんたんどく)を根絶することは不可能のようです。
しかし予防対策でもあった通り「衛生管理」に重点をおいて対処することで、多少なりと豚丹毒の発生を防ぐことは可能であるといえそうです。
事実Meau(エムオー)を散水使用していた施設においては、他施設よりに比べ格段に豚丹毒の発生が少なかったとの事例もあります。
定期的なワクチン接種及び衛生管理を心がけていただきつつ、畜産場の動物をはじめ、動物園水族館などで見られる可愛い動物たちやそれらに携わる方々が豚丹毒に冒されることなく、これからも元気でいられるよう心から祈っております。

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